てぃーだブログ › 始業式の講堂に、 › りで目がま

2017年05月05日

Posted by yehalao
at 18:02
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りで目がま

 りで目がま
台所は、学校の一ばん下の階にありましたから、着くまで暗いろうかとせまい階段を、いくつも通らなければなりません。大食堂から三十分もかかるので、食事がいつも冷えきってしまうのです。
「心配ないからね、トラチャン」ミルドレッドは、トラチャンの毛皮に顔をうずめてすすり泣きました。「またいっしょに暮らせるように、なんとか考えてみるから。最初にトラネコをくれたのは、あの人たちなのよ。こんなのってないわよね」
 台所は、大きなオーブンのせいでとっても暖で、活気がありました。かまどの上の大鍋では、始業式のあとでだされるオートミールが煮えたっています。
 ミルドレッドは戸口にそっと立ちどまって、下働きのコックさんたちが、いそがしく立ち働く様子を見守りました。ミス・タピオカは、鏡もちのような体消耗脂肪 運動つきの人で、白髪をヘヤー・ネットでつつみ、四〜五メートルもある長い台のまえで、献立表をながめていました。
「おや、ミルドレッド・ハブルだね!」ミス・タピオカは顔をあげて、ずぶぬれのミルドレッドがたたずんでいるのをみつけました。「ネコをつれてきてくれた? 見せておくれ。そんな所につっ立ってないで、こっちにおいでよ」
 ミルドレッドは、コートの下からトラチャンをとりだしました。コックさんたちはまわりに集まって、トラチャンをくすぐったりなでたりしました。
「こりゃあ、ネズミとりにぴったりだ」と、ミス・タピオカ。「このバスケットの中に、イーボニイっていうかわりのネコが入ってるよ。台所でネズミを追いかけさせるにゃ、りこうすぎるんでね。それじゃ、そのネコを置いてっとくれ。それとも、あんたもここに残っていっしょにネズミを追いかけるかい?」
 ミス・タピオカは、ミルドレッドにバスケットをわたしました。バスケットのすきまからふたつのりこうそうな緑色の目が、暗闇の中でかがやいているのが見えました。台所ですっかり暖まったトラチャンは、お気に入りの場所、ミルドレッドの首にまきついています。ミルドレッドは、バスケットを持ってでていくしかありません。
「トラチャンにあいにきてもいいでしょうか?」トラチャンを首からほどいて、ミス・タピオカにわたしながら、ミルドレッドはふるえ声で聞きました。
「それは、感心しないね」ミス・タピオカは、なんとか身をふりほどいてミルドレッドの肩にもどろうとするトラチャンを、がっちりだきしめながら言いました。「ネズミとわるほどいそがしくなるだろうから、あんたにかまっているひまはないよ。イーボニイをつれていきなさい。本当にじまんできるネコだから。イーボニイみたいなネコといっしょに飛んでみりゃ、こんなコネコのことなんざ、五分とたたずに忘れちまうさ! お聞き! 始業式のベルだ。いそいだ方がいいよ」
 ミルドレッドは、あとをふりかえらずに台所をでていきました。ミルドレッドについていこうと、トラチャンが絶望的に鳴いているのが聞こえてきます。ミルドレッドは、階段を二段とびでかけあがり、自分の部屋に飛びこんで、スーツケースとほうき、イーボニイの入ったバスケットを投げだすと、最後のろうかをダッシュして、講堂への行進に加わりました。
「やあ、ミル」と、イーニッド。「おや、どうしたんだい?」
「ほんとにどうしたの、ミルドレッド?」と、モード。「真っ青よ。校長先生のお話、よっぽど悪いことだったの?」
「うん、そうなの」ミルドレッドは、こらえきれずに声をし







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