てぃーだブログ › 始業式の講堂に、 › れる捜査を担当し

2017年05月16日

Posted by yehalao
at 11:11
Comments(0)

れる捜査を担当し

何週間もまえのことではないが、ロード・アイランド州はパスコーグという村の通りの角で、背の高いがっしりした体格の健康そうな通行人が、一風変わった振舞をやってのけ、かなりな物議をかもしだすことにあいなった。この男はチェパチェットからの道をたどって丘をおりてきたらしく、家屋の密集した箇所に行きあたると、左に道をおれ、つつましい商店が何区画も並び、ちょっとした街らしい風情を感じさせる大通りに入っていった。このとき、興奮させられるようなものなど何も見あたらないというのに、驚くべき奇行におよび、目のまえに建つ一番高い建物をつかのま妙な眼差で見つめたあと、一連のおびえたヒステリックな悲鳴をあげながら、やみくもに走りだしたのだが、やがてよろめいて次の角で倒れこんでしまった。素早く駆け寄った者たちに抱き起こされて服の塵《ちり》をはたき落とされたとき、男は意識もあって体にはけがもなく、突然の神経発作もおさまっているようだった。男は恥じいった様子で、気がはっていたこともふくめて釈明の言葉をあれこれつぶやくと、目をふせてチェパチェットへの道をひきかえし、そのまま一度もふりかえらずにとぼとぼ歩いて姿を消した。これほど大柄でたくましく、まともな顔つきをして有能そうに見える男にふりかかるにしては、何とも不思議な事件だったが、この様子をながめていた者の一人が男に見おぼえがあり、チェパチェットはずれのよく知られた農場主の下宿人だといったことでも、不思議さが減じることはなかった。
 あとで知れたことだが、男はトーマス・F・マロウンというニューヨーク警察の刑事で、変事によって劇的なものとなった地元の気味悪い事件について、ことのほか骨のおた後、長く仕事を休んで医者の治療をうけているのだった。同僚とともにおこなった手入れのあいだに煉瓦《れんが》造りの古い建物がいくつか倒壊して、逮捕者と同僚の双方におびただしい死者が出たのだが、そのことにかかわる何物かにはなはだしいショックをうけたらしい。その結果、倒壊した建物をいささかなりともしのばせる建築物に対してさえ、異様なまでの激しい恐怖を抱くようになり、あげくのはては何人もの精神病の専門医に、しばらくのあいだそのようなものは見るなと厳命される始末だった。チェパチェットに親戚《しんせき》のいる警察医が、植民地時代風の木造家屋が建つその古風な小村を、神経を癒《いや》す者にとって理想的な静養地だとして薦め、こうして患者は、ウーンソケットのかかりつけの専門医からそれと指示のあるまで、大きな村の煉瓦造りの建物が並ぶ通りには、決して足を踏みこまないと約束して出かけることになった。雑誌を求めにパスコーグへ歩いていったのは失策以外の何物でもなく、病人は約束をまもらなかったことで、突然の激しい恐怖、いくつもの傷、そして屈辱といった代償を支払わされたのである。
 それだけのことがチェパチェットとパスコーグの噂話《うわさばなし







上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

pagetop▲